染織 いとをかし

糸を染め、着物や帯を織っています。染めや織りにまつわることや、日々のよしなしごとを綴ってまいります。

卯月

道を覆う桜の絨毯も少なくなり、陽当たりの良い場所ではツツジが咲き始めています。春は1日ごとに進んでいますね。


模紗織りのストール3枚を仕上げました。

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フサを一気に3枚分をヨリヨリしたのですが、単純作業は好きなのですが、これは飽きる!

織りの作業中は音を聞かない…正確には聞けない?派…フサを作る時・絣をくくる時は音が欲しくなります。

基本的に根性ナシ+流され侍なので、つい現実逃避で積んである本などに手がのびそうになります。

音を聞いてると、区切りの良いところまでは頑張ろうと思えます。

耳心地の良い声だったり、ノリノリになれる音楽だったり。好きなモノを聞いてテンション上げてやりたい作業です。

本も音楽も新規開拓はあまりしないので、昔から好きなモノを何回繰り返しても飽きない人間で良かったなぁ、などと思いながら楽しくヨリヨリしました(笑)

次の反物の糸を染めました。

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上2綛が経糸(生糸)・下2綛が緯糸(真綿糸)です。

染料はキンモクセイとラックダイ。

キンモクセイは普段は秋に剪定した枝葉を使いますが、今頃の季節に剪定したモノを染めるのは初めて。

季節もあるのか?剪定しから少し時間が経っていたからか?ちょっと茶みが出ました。淡いグレーを狙っていたのですが、グレージュくらいでしょうか。

合わせる色(ラックダイ)を少し調整して、この組合せなら…と思える色になったので良かったです。

みじん格子なのですが、目の錯覚?くらいの絣が入ります。

効果があるやなしや・・・楽しみです。


保多織り

ミモザの黄色、白木蓮のオフホワイト・・・目に写る景色が春めいてきましたね。


先月末に細い木綿の糸で織るストールが織り上がりました。

今回は保多織りにしてみました。

簡単に保多織りのご紹介。

江戸時代に香川で生まれた織物で、かつては絹糸でしたが、明治維新後は木綿中心になったそうです。

名前の由来は、いつまでも丈夫で「多年を保つ」という意味で命名

肌ざわりがよく、通気性・吸水性にも優れています。

手持ちの細い木綿糸が、とっても綺麗な(綺麗過ぎる!)糸なので、なにか表情のある織りにしてみたくて試してみました。

アップにするとこんな感じの織物です。

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4枚織りまして、そのうちの1枚を横縞にしました。

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これが・・・横縞は難しい!

センスが問われるというのか、なんというか…これはダサくない?センスの欠片もなくない?と、首をかしげながら織りました。

自分の癖と言うのか、色の並べ順や幅など、どうもパターンが出来てしまうようで。

それがどうにも「イケてない感」を醸し出しているような気が・・・

難しいですが、考えて過ぎずにしっかり考えていかないとなぁ…と今後の課題にもなりました。

次は模紗織りのストールを織っています。

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こちらは絹糸で(写真では分かりにくいですが)経糸の染色はゴバイシの濃淡。

1枚目のこちらは緯糸もゴバイシの濃淡で織っています。

こちらも2色使うので…そこそこイケてるストールになるよう、頑張ろうと思います(笑)

春一番

豆まきの炒り豆が大好きです。

歳の数だけじゃ食べたりない!もっと!もっと豆を!!

…と、思っていたなぁ(遠い目)

一気に食べるには多過ぎじゃ?と思うようになるなんて。そんな事を思う節分でした(笑)


先月織り上げたストールを仕上げました。

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緯糸で雰囲気が違い巻き心地が良いのは真綿のほう(下)見た目スッキリしてるのは片撚りのほう(上)かな。


次作の着尺はこんな色です。

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少しメタリックな茶色を目指しました。

染料はコーヒーにアセンヤクの重ね染め。媒染はおはぐろ(鉄)です。

濃い色に淡い雨が降る、ほんの小雨程度の雨絣・・・の予定でした。

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しかし思ったより本降り・・・あれ?(笑)まぁ、これはこれで好きな感じなので良いのですが。


染める時は、色のイメージが決まったら染料や媒染を考えます。

頭の中の引出しをひっくり返して、ああでもない・こうでもない…とブツブツ言いながら。

草木染めは同じ条件で染めても完全に同じ色を再現できないのですが、染める時は染料や媒染の濃度(染めるモノに対しての比率)は必ず記録に残しています。

記録と記憶に残すようにするのが大事だと思ってます。

あ、ちょっとカッコイイ風に書いてしまいました(笑)

自分が染めた時もですが、誰かが染めた良い色を見たら、何の染料でどんな比率だったのか…お聞きできる人だったら、迷惑をかえりみず!ネホリハホリお聞してしまいます。

ノートには、誰が書いた?と思うような、我ながら謎の数字が書いてあったりするので(笑)記録だけでなく記憶も大事ですね。

とは言え予定と違う色になることも多々あるのですけどね。

今回だと、コーヒーが思いの外強めの色になり(緑みのグレー)ちょっと戸惑いましたが、全体の色を赤みのない茶系にしたかったので気に入っています。

草木染めで出会う色は一期一会。

楽しい世界です。

気温が日替わりな日々ですね。


アジロの着尺ももうすぐ3丈。

平織りは織り始めると織り進めていく過程では見た目に変化がなく…気持ちはずっとワクワクしてるのですけどね。

無地や縞なども飽きてしまう人もいらっしゃるようなのですが、私はずっと同じでも(いや、むしろ同じが!)楽しいです。

染めのお話を。

今回の緯糸の濃い色は榎(エノキ)で染めました。

榎はニレ科の落葉樹。昔は一里塚にも植栽されていたそうです。

巨木になり大きな緑陰を作るので、きっと旅人の目印にもなり、木陰で休んだりしたのでしょうね。


剪定した枝葉を煮出します。

染液を空気を含ませるように、柄杓などを使ってジャバジャバーっと撹拌。

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左が煮出した時の色

真ん中が100回撹拌

右が200回撹拌

酸化してみるみる赤くなるのです!

実験してみたかったので、1~3煎目まで同じように撹拌して染めてみました。

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↑2煎目

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↑3煎目

1煎目が一番赤くなり、2煎3煎目は薄くクリアになるかな?との思惑と外れ、茶みが出ました。

実験なので同じ条件にしたくて、200回ずつ持ち上げてジャパーッと撹拌しましたが、軽い筋トレでした。さらに茶みが出てしまったので途中でちょっと後悔しながら(笑)

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左から1・2・3です。


染めは本や話で知ることも大事かも知れませんが、やはり経験しないと分からないものだな…と思います。

同じ染料でも染める度に、毎回なにかしら違う事を得られ楽しくて飽きないです。



新年

あけましておめでとうございます。

私の住む辺りでは晴天で穏やかな三が日でした。

冷たく空気が澄んでいる冬の夜空は、なんとも美しくまばゆいですね。


ストールのフサをヨリヨリしたり、糸巻きしたり、新たに織るものをボンヤリ考えながら年末年始を過ごしていました。

織りあがったストールは平織りとウネ織りで市松。

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透かさないと分かりにくいかな?と夕陽に照らしてみましたが…より分かりにくいかも(笑)まぁ、イメージ映像ってことで。

ゴバイシで染めた片撚りの糸で1枚と、シラカシで染めた玉糸で1枚。軽くても温かなストールになりました。

平織りが好きなのですが、ストールには地模様も良いかもなぁ。今年も色々と試していこうと思います。


そうそう、先月干し柿は無事に完成!

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出来立てを母と半分こして味わい(美味しかった~♪)あとはラップで包み冷凍庫へ。

ゆっくり・じっくり食べようと思ってます。うふふ。


昨年は、行ける時に行き、会いたい人には会える時に・・・と、痛いほど思い知った1年だった気がしています。

好きなもの・大切にしたいものには、もっともっと真摯に向かい合えるようになれたらなぁ…と思う年の始めでございます。

今年もよろしくお願いいたします。

干し柿

気づけばカレンダーも最後の1枚。早いですねぇ。


母の友人から渋柿をお試しに分けて頂いたので(8個ですが)人生初!干し柿を作っています。

あまり寒くない地域なのでカビるかなぁ…と、手を出せずにいたのですが今のところ順調♪

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1個だけ皮をむく時に既に柔らかめだったモノがあり、干して1週間ほどで少し破れていたのでナメてみたら甘い!

普通の柿(甘柿)でもヤワヤワ派の母に食べられてしまいました(笑)

日々の変化を愛でながら、カビチェック・乾き具合チェックしながらモミモミするのが近頃の楽しみです。


あ、着尺も織っています!

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久々のアジロ。やはりアジロは良いですねぇ。

細い木綿の模紗ストールも仕上げ、次は絹で多色の縞でウネ織りと平織りで市松模様に。

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寒くなりましたね。年末に向け忙しくなる時期。

お風邪ひかぬようご自愛くださいませ。

小雪

赤や黄色に色づいた木々が美しい季節ですね。

カサコソと地面を舞う落ち葉を見ると踏まずにはいられず、ドングリを見れば拾わずにはいられず、道を歩くのが忙しい季節です(笑)

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一崩しの反物が織り上がり、検反(糸の始末やお掃除)して後は地入れに出すのみ。

どこからが傷で、どこまでが味なのか…節糸の味わいの範囲については、毎度の事ながら悩みます。

織っている時には「これは味!」と思っているのに、検反していると「ううむ、これは傷かも…」と思えてきて。

細い木綿糸の模紗織りのストールも3枚織り上がりました。

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これからフサをヨリヨリして仕上げ。

もっとフワッとクシュッと、ラフな感じにしたかったのですが、なんだかお行儀が良くなってしまう…

織ってる人間のガサツさが欲しいのに…にじみ出る繊細さ?いや、糸が綺麗なだけなのですけどね(笑)

着尺もストールも反省点が色々あり、もっと糸の持ち味を布に活かせるようにしたいなぁ…と思っています。

次の着尺は可愛らしい色のアジロの紬です。

使用するのは6色の経糸と2色の緯糸

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冬に向かう中、優しい色と向き合えるのが楽しみです。